私のアンガージュマン

(written in 2001)


私の芸術
芸術と呼べるだろうか?
ともかく、それに携わって、10年になる
その行為に敢えて意味を見出そうとすることに
私は労苦を惜しまなかった
”意味”というのは
私を孤独の深淵へと失墜させる
あの巨大な怪物的構造体
つまり人間社会と呼ばれているものに於いてのことだ
私の心は
木の葉のように震えている
社会との直接的な関係は私の
脳髄を混迷に追い遣る
人は日々何も意識せずに呼吸するだろう
しかし、私はレスピレーターが無ければ呼吸できない
私の絵が
即ちレスピレーターなのだ
自然呼吸と人工呼吸
この差異を
感覚的に理解できなければ
私という人間もまた理解されることはないだろう
人間関係の断裂
この考えは私を絶えず震撼させる
何故、私が私で、私があなたでないのか
私が絵を
描き続ける理由は
ただひとつ
私は、あなたとの間の垣根を
取り去りたいのだ



雁羽 令